季節はずれの怪談シリーズ「欲しかったんだね」

昨夜に引き続き、これも母の実家(愛媛)に帰省した時の出来事です。
(ちなみに先日の件とは違う年の出来事です。)
母の実家に帰省する際は、飛行機で松山空港まで飛び、
そこからはおじさん(母の兄)に、車で迎えに来てもらっていました。

ただ、母の実家までは空港から更に数時間車で走った所に有り、
車窓から覗く景色は、松山市内の街並みから、
どんどん淋しげな街並みへと移ろい、山を抜けやがて海に変わります。
田舎育ちの私ですが、海を見る機会はそう有りませんし、
車窓を流れる景色の変わりようが面白く、ずっと外を眺めていました。

ただ、母や兄はその道程が退屈らしく、
小一時間も走るとすぐにイビキをかき始めていました。
(父は三重で留守番してた。)

そんな長距離を往復するため、道中のGSで一度給油する事になりました。
GSに入り給油し終えると、丁度何かのキャンペーン中だったのか、
私と兄に風船をひとつづつくれました。

給油を終えてGSを出ても、兄と母は未だ夢の中。

そしてそこから暫く走った頃、信号待ちで止まった交差点での出来事です。

私達が信号待ちをしている車のすぐ横の歩道で、
ガードレールに花をたむけ、手を合わせている女性が居ました。
年はまだ若く、花の他におもちゃやお菓子などを供え、何かはなしかけています。
それを見ていた私を察したおじさんは、
「きっとあの人、ここでお子さんを亡くされたんだね」と言いました。
「きっとそうなんだろうな、可哀想だな」と、子供心に思った記憶が有ります。

そして、その信号待ちでの出来事です。

急に「コツコツ」と車をノックするような音が聞こえるのです。
最初は特に気にしなかったのですが、それが段々激しくなり、
「コツコツ」だったのが、「ドンドン」に変わり、その間隔も短くなっていきました。
運転していたおじさんもそれに気付き、いぶかしそうな顔をしていました。

そして、信号が青に変わり、車が動き出した瞬間


パンッ!


さっきGSで貰った風船が、一つ急に破裂したのです。
何の事やら、さっぱり解らなかった私でした。
ヘリウムで満たされた風船は、車の天井に浮いており、
およそ風船を破裂させるような突起物などは見当たりません。
そして風船が割れてから、車をノックする音もピタっと止みました。

するとおじさんが一言こう言いました。

「きっとあの子、風船が欲しかったんだよ。」

「あの子」とは、さっきの交差点で花を手向けられていた子の事でしょう。
そう理解した私は。

「うん、そうやな、風船持って行ったんやな、良かったわ。」

とおじさんに答えました。

そんな中、兄と母はずっと寝息を立てたまま。

遠い夏の日の記憶、愛媛での出来事でした。
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